スセリの日記3

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ゲームシナリオライターの仕事 名作RPGに学ぶシナリオ創作術

目次

1章 シナリオとは何か?
■シナリオとは何か?
 最初に「シナリオとは何か?」を考える
  ・シナリオを構成する「起承転結」
 起承転結とは何か?
 わかりやすいシナリオとは、どのようなものか
  ・緻密に計算された時間割り
 『E.T.』から学ぶ「起」とは何か
  ・最初の「人」紹介
  ・2度目の「人」紹介
  ・3度目の「人」紹介
  ・目標の提示
  ・「起」に必要な機能
 『スターウォーズ』から「承」で何が起こるのかを学ぶ
  ・繰り返される「成功」「失敗」「変化」
  ・「承」を構成する展開部
  ・何が「承」のできを決めるのか
 「転」の機能を『ジョーズ』から学ぶ
  ・「承」から「転」へ
  ・「転」の結末
 『ダイ・ハード』の「結」で何が行われているのか
  ・最後を「結」で締める
 「起承転結」をまとめると
■ゲームシナリオの制作過程
 ①企画会議その1
 ②企画書作成
 ③企画会議その2(企画審査会議、プレゼンテーション)
 ④プロット会議その1(ブレインストーミング)
 ⑤プロット作成
 ⑥プロット会議その2(意見交換)
 ⑦箱書き作成
 ⑧シナリオ会議
 ⑨メインシナリオ第1稿
 ⑩街キャラセリフの作成
 ⑪進行会議
 ⑫メインシナリオ第2稿
 ⑬メインシナリオのナレーション収録
 ⑭デバッグ

2章 起
■2章以降の流れについて
 本書の話の進め方
  ・その①題材として扱うゲームソフトについて
  ・その②本書の構成について
  ・その③天外2とルナ2を題材として選んだ理由について
 起のおさらい
■天外2の「起」
 フラグ誘導を自然にセリフに織り込むには
  ・機械的な情報をセリフに置き換えていく
  ・本当に言わせたいセリフは言わせない
 キャラクターは、どのように解説するのか
  ・キャラクターを他人に語らせるテクニック
 なぜ、卍丸は「頭のかたい大人たち」に反発するのか
  ・プレイヤーが主人公に共感するために
 選択肢の面白い使い方
 「フラグロスト」の回避方法とは(その①)
  ・重要な情報は繰り返す
  ・方角を指定してフラグ誘導
■ルナ2の「起」
 物語を「引っ張る」有効な方法とは
  ・謎でプレイヤーの心をつかむ
 なぜ、マスコットキャラクターがしゃべるのか
  ・主人公のかわりにしゃべる
  ・謎解きの推理や物事の推測をする
  ・やってはいけないことを注意したり、とめたりする
  ・トラブルに首を突っ込む
  ・主人公と別行動を取る
  ・便利なキャラクターは活用する
 ゲームならではのキャラクター表現方法とは(その①)
  ・戦闘パラメーターでキャラクターを表現する
  ・映像ならではの表現「見ればわかる」
CREATOR'S INTERVIEW1⃣ 桝田省治
 Column「ゲームシナリオの特異性」
   
3章 承の1(展開部の1)
 承のおさらい
  ・ゲームシステムの存在
■天外2の「承の1」最初の展開部
 主要キャラクターの初登場シーンの描き方
 解説キャラは、どのように配置するか
  ・なぜか、アイテムがしゃべる
  ・なぜか、主人公を助けてくれる敵キャラ
 なぜ「菊五郎」を登場させたのか
■ルナ2の「承の1」最初の展開部
 街キャラセリフの管理方法とは
  ・ローカルフラグとグローバルフラグ
  ・テキストファイルから実例を見る
 シナリオライターが街の特色を出すには
  ・例①複数の情報を同時に提示する
  ・例②生活感にのせて村の設定を提示する
  ・例③個人的な感想にのせて村の設定を提示する
  ・例④村の住人レベルでもキャラは立てる
  ・例⑤視点を変えた情報を提示する
 能動的に主人公とプレイヤーをシンクロさせる方法とは
  ・プレイヤーの手で主人公と同じことをさせる
  ・プレイヤーと主人公の共感
 ゲームならではのキャラクター表現方法とは(その②)
 大きな謎を忘れさせない方法とは
  ・謎を引っ張るためのシーン
  ・謎を引っ張るテクニック

4章 承の2(展開部の2)
■天外2の「承の2」ふたつめの展開部
 解けるように作られた仕掛けとは(その①)
  ・難易度の設定がポイント
  ・仕掛けは解けなければ意味がない
 解けるように作られた仕掛けとは(その②)
  ・キャラクター性を仕掛けで表現するテクニック
 仲間が抜けるイベントが印象に残りやすい理由とは
  ・仲間が抜けることで起こる問題
  ・メンバーが抜けることへのフォロー
  ・パーティアウトの2つの理由
■ルナ2の「承の2」ふたつめの展開部
 「フラグロスト」の回避方法とは(その②)
  ・プレイヤーはまず最初に何をするのか
  ・NPCのセリフでフラグを誘導する
 ルーシアの心情の変化(その①)
  ・なぜ、キャラクターは歌うのか
  ・心情の変化は段階的に描かなければならない
CREATOR'S INTERVIEW2⃣ 重馬 敬
 Column「覚悟のすすめ

5章 承の3(展開部の3)
■天外2の「承の3」3つめの展開部
 ページ切り替えのタイミングを使った演出とは
  ・タイミングを効果的に利用するテクニック
  ・背景のイメージをセリフに反映させる
 キャラ立ての大切さを具体例から学ぶ
  ・キャラ立てをイベントに組み込む
  ・菊五郎と戦闘敗北時のセリフ
  ・野分の術をくれる天狗のセリフ
  ・富山町の復活セリフ
  ・海牛法師との戦闘中のシステムメッセージ
  ・丹波の国、技を1減らす天狗のセリフ
■ルナ2の「承の3」3つめの展開部
 ルーシアの心情の変化(その②)
 「時間を盗む」とは、どういう意味か
  ・時間を盗む処理の例
  ・その他の時間を盗むテクニック

6章 承の4(展開部の4)
■天外2の「承の4」4つめの展開部
 ゲームならではのキャラクター表現方法とは(その③)
  ・同じキャラとの戦闘を何度も繰り返す
  ・戦闘発生率や敵の強さで表現する
 登場させておくと便利な、もうひとつのキャラクター
  ・影から守るキャラクターの機能
 ゲームでの伏線の使い方とは
  ・ナレーションつきのセリフを利用する
  ・わかりやすい単語をセリフに織り込む
■ルナ2の「承の4」4つめの展開部
 ルーシアの心情の変化(その③)
CREATOR'S INTERVIEW3⃣ さくまあきら

7章 転
 転のおさらい
■天外2の「転」
 物語のなかで数を提示することの重要性
  ・なぜ、数を強調するのか
  ・進行状況をプレイヤーに知らせる
  ・プレイヤーを驚かす
■ルナ2の「転」
 ゲームならではの戦いの演出
  ・戦闘システムとイベントを使い分ける
 ラスボス戦では何が描かれるのか
  ・互いの存在理由をかけた戦いの表現方法

8章 結
 結のおさらい
■天外2の「結」
 アイデアの作り方
  ・まずは情報収集から
■ルナ2の「結」
 ルーシアの心情の変化(その④)
  ・ゲーム後ゲーム
CREATOR'S INTERVIEW4⃣ 芝村裕吏

9章 ゲームシナリオの実例
 シナリオのテキストファイルを見てみよう
 ルナ2のテキストファイル



著者:前田圭士
監修:桝田省治/重馬 敬
発行者:新田光敏
発行所:ソフトバンククリエイティブ株式会社
印刷:岩岡印刷工業株式会社
装丁:末永和人(G.FACTORY)
組版/本文デザイン:株式会社フレア

ISBN4-7973-3596-3
C0055 ¥2500E
定価 本体2,500円+税

 


中表紙から目次までの導入部分が14ページ、メインとなる本文309ページという、ゲームシナリオの解説書。
天外魔境Ⅱ 卍MARU』と『ルナ エターナルブルー』の2作品を題材にして、前田圭士氏がゲームシナリオの書き方と考え方を解説している。

また、この本を執筆するにあたり参考にした参考文献が細かく書かれているのも、筆者のこだわりと参考作品への敬意が感じられてとても良い。

それぞれのゲームの起承転結をまじえて書いているためネタバレ全開だが、ゲームをプレイした人間には、ゲームのシナリオの魅力を改めて実感できた。筆者の解説により天外2を振り返り、シナリオの深さを改めて実感できる1冊である。


桝田省治氏の20ページにもわたるインタビュー、ゲームシナリオの特異性についてのコラム2ページも必読である。
印象的だったのは桝田氏がインタビュー内で語ったメインキャラの「二段階変身」と極楽太郎とはまぐり姫は対照対比であるという一節。
メインキャラの二段階変身、バージョンアップする瞬間をそれぞれ作りたかったと書かれていて、それぞれ該当する場面が書かれていた。絹は純血の鎖を解いた時。カブキ団十郎は2回目の登場。極楽太郎は昔の恋人の装備(千代の太刀、千代の鎧、千代の兜、千代の沓)を見つけた時。戦国卍丸は自分の聖剣を打つ時。確かにそれぞれのキャラクターたちがバージョンアップした瞬間だったと思い出された。極楽太郎の二段階変身は桝田氏が言っているように他の3人に比べると地味である。何故なら、上述の極楽の装備を入手するのは強制イベントではなく(装備品を入手するには、火の勇者義経の出身地である人魚村船海宮の女王鶴姫と会う必要があり、船海宮によるか否かはプレイヤーの自由)、プレイヤーによっては装備品を入手することなくスルーしてしまったかもしれない。だが、極楽太郎のために千代が作った武器や防具を身に着けて戦うというのは胸熱である。
また、極楽太郎が仲間になるときに登場する敵は極楽太郎と対比になるはまぐり姫であり、極楽の体術と肉体に対してはまぐり姫の幻術とまやかし云々のくだりがとても面白く、二人の対比の設定の奥深さを感じた。

 

それから、この本はとてもシンプルな表紙なのだが、帯つきだとがらりと印象が変わる。すでに入手困難で帯付きとなると探すのは難しいが、可能なら帯付きを買うことをおすすめする。下の画像は帯付き状態の画像である。

 

tengai-okuni.hateblo.jp